電子契約を学ぶ

2020年10月26日

推定効とは? ~契約書のはんこと電子契約~

在宅勤務もひと段落し、久しぶりに出社したらデスクの上に回覧書類がありました。書類の最後には「鈴木」というはんこが押してあります。
このとき、皆さんは、この「鈴木」のはんこを「書類の作成者が鈴木さんである」や「鈴木さんが『読みました』の意味で押したもの」と理解することはあっても、「佐藤さんが手元に自分の佐藤と書かれたはんこが見当たらなかったのでたまたま近くにあった鈴木さんのはんこを押したもの」と理解することはありません。なぜでしょうか。

契約書や書類に押してあるハンコにはどんな意味があるのでしょうか。今回は、「推定効(すいていこう)」についての記事です。推定効とは、どのようなものでしょうか。行政も、「脱はんこ」に本腰を入れはじめましたが、「脱はんこ」が進むと、私たちにどのような影響があるのでしょうか。

「推定効」が持つ意味

「みなす」と「推定する」

日本の法律には「みなす」「推定する」の2つの表現があり、それぞれ意味が異なります。

「みなす」は、「本来AとBは違うものだが、条件を満たしたときはAをBと同一のものとして取り扱う」という意味です。たとえば民法第753条は、A(婚姻した未成年)はB(成年)と同一のものとして取り扱うこと、いわゆる”成年擬制“を定めています。具体例としては、Aさん(17歳女性)が婚姻したら私法上は成人を迎えたこととするというものであり、「私は未成年なので」と主張や反論はできない、ということになります。(あくまで私法上のことであり、未成年が結婚したらお酒を飲んでもよくなるわけではありません。)

一方、「推定する」は、「法律上はいったん『XはYとする』と決めておき、それをくつがえすような証拠がでてこない限りはそのように取り扱う」という意味です。民法第772条第1項は、婚姻中の妻が妊娠した場合は、X(妻のお腹の中にいる胎児)はY(夫の子)として取り扱うことを定めています。あくまで「いったんそうとりきめておく」ものですから、「そうではないという証拠があるから訴訟をして結果を変更する」ことは可能です。

はんこは「推定する」

民事訴訟法は、はんこが押されている契約書や書類を「その書類の作成者」や「はんこの持ち主である本人の意思が表示されたもの」として取り扱うことを定めています。民事訴訟法が定めているということは「裁判の証拠として使うことが認められる」という意味でもあります。つまり、契約書の署名や押印は、本人が契約に合意したことを「推定する」材料となるのです。この「真正に成立したものと推定する」という部分を、一般的に「推定効」と呼んでいます。

推定効の役割

このように、推定効がはたらく契約書は、訴訟やトラブルに発展した際に契約に合意した証拠としての価値があります。トラブル無く契約が履行された場合は特に意識する必要はありませんが、いざというときに大変重要な意味を持つことがあるのです。

さて、前述の「佐藤さんが押した鈴木さんのはんこが押されている書類」は、それをひっくり返す証拠がでてくるまで訴訟において「鈴木さんが自分の意思で押したはんこ作成した文書」として取り扱われてしまうのでしょうか。

もちろん、今回の書類は部内の回覧書類であり、裁判になる心配を深刻に考える必要はありません。ただ、これが契約書や重要書類となると話は変わってきます。たとえば、日本には鈴木さん姓の方は大勢いますから、どの鈴木さんが契約締結の意思をもってはんこを押したのか、特定できる必要があります。はんこを登録(印鑑登録)し、登録したはんこで契約書を締結したり、契約書の記名押印欄に役職名までを書き込むことで「どのような権限をもつ〇〇社の鈴木さん」と特定できるようにしたりするのは、鈴木さんが契約に合意していることをより明確にするためなのです。

また、同じ部署の佐藤さんに、はんこを使われないようにする必要もあるかもしれません。ただ、私たちは、部署内の回覧書類に押すはんこを契約書に押すはんことは別のもの(認印)を用意するなど、はんこを押す意味を無意識に感じ、これまでも使い分けてきたのです。

電子契約における推定効(2020年9月版)

新型コロナウイルス感染症対策として急速に広がった在宅勤務やテレワークですが、行政もついに「脱はんこ」に取り組むようです。

電子契約における推定効はどのように考えられているのでしょうか。まず、電子契約には紙の契約書と違い、押印や署名はありませんが、代わりに電子ファイルの契約書に対し、電子署名を行います。電子署名は電子証明書電子認証局などといった技術を使うことで、印鑑や印鑑証明書の役割を果たしています。

この電子署名に推定効がはたらくかどうかについては、電子署名法をみてみましょう。まず、電子署名法の第2条は、電子署名が契約書などの電子データを本人が作ったことと、改ざんされていないことを証明できるものである必要であることを定めています。

電子署名法第2条
この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

続く電子署名法第3条には、次のように書かれています。

電子署名法第3条
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

要約すると、「本人だけが行える電子署名が電子データに対して行われていれば、推定効がはたらく」ということですので、電子契約における電子署名でも、本人だけが行える電子署名であれば推定効が認められることがわかります。

まとめ:電子署名法第3条に基づく電子署名は推定効がはたらく

推定効とは、契約時に交わす契約書などといった書面が「真正に成立したものと推定できる」状態であることを示しています。紙の契約書への署名や押印は、訴訟に発展した場合でも推定効がはたらき、合意の成立の証拠として利用できるのです。
電子契約でも、電子署名法第3条に基づく電子署名があれば契約書への署名・押印と同様の推定効がはたらくことがわかりました。電子契約システム「GMO電子印鑑Agree」は、電子署名法に基づく電子署名が簡単にできるクラウドサービスです。電子契約の導入に不安がある企業の方でも、安心して導入していただけます。この機会に、ぜひご検討ください。

<参考資料>
電子署名法に基づく特定認証業務の認定について
電子署名法第2条関係Q&A(令和2年7月17日)と、電子署名法第3条関係Q&A(令和2年9月4日)を参照)(法務省)

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ハンコ脱出作戦 編集部

筆者

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